音楽療法士になりたいけど「仕事がない」と聞くと不安になりますよね。
夢を諦めるべきか悩んでしまうし、将来の生活に対する不安を感じる気持ちよくわかります。
できることなら、好きな音楽を活かして人の役に立つ仕事に就きたいですよね。
実は、音楽療法の世界を正しく理解することで、将来のイメージを具体的に描くことができます。
音楽療法士が置かれている現状を把握できれば、漠然とした不安に振り回されることにはなりません。
そこで今回は、「音楽療法士のメリット・デリットと、向いている人の特徴」をご紹介します。
音楽療法に興味があるなら、夢を諦めないキャリアプランを立てられるようにしましょう。
- 音楽療法士の現実的な仕事事情と将来性がわかる
- 適性や必要なスキルから自分に向いているか判断できる
- 資格取得から就職までの具体的なプロセスが理解できる
音楽療法士の仕事内容

音楽療法士は、音楽を通じて心身の健康促進や機能回復をサポートする専門家です。
患者やクライアントの状態に合わせて音楽活動を計画し、実施することで治療効果を高める役割を担います。
音楽療法士の主な仕事は、クライアントのアセスメント(評価)から始まります。
まず心身の状態や課題、音楽的背景などを詳しく調査・分析し、その人に最適な音楽療法プログラムを立案します。
そして実際のセッションでは、歌唱、楽器演奏、音楽鑑賞、即興演奏などの活動を通じて、コミュニケーション能力の向上や感情表現の促進、身体機能の改善などを図ります。
セッション後には経過記録を作成し、効果を評価して次回の計画に反映させます。
たとえば、認知症の高齢者には懐かしい歌を一緒に歌うことで記憶を活性化させたり、自閉症スペクトラム障害の子どもには楽器演奏を通じて社会性を育んだり、リハビリテーションが必要な方には音楽に合わせた動作で運動機能を高めたりします。
医療現場では痛みの緩和や不安軽減にも音楽が活用されています。
音楽療法士は単なる音楽指導者ではなく、心理学や医学の知識も持ち合わせた医療・福祉の専門職です。
チームアプローチの一員として他職種と連携しながら、クライアント一人ひとりの目標達成に向けて音楽の力を最大限に活かす仕事です。
音楽療法士になるメリット

音楽療法士は音楽の力を使って人々の健康と幸福に直接貢献できる、やりがいのある専門職です。
自分の音楽的才能を活かしながら、社会的意義のある仕事として確立できる点が大きな魅力といえるでしょう。
- 人の心と体の回復に貢献できる
- 音楽の専門知識を活かせる
- 幅広い対象にアプローチできる
- 多分野で活躍できる
- 自己表現と他者支援を両立できる
人の心と体の回復に貢献できる
音楽療法士の最大のメリットは、人の心身の回復や成長に直接貢献できることです。
音楽には科学的にも証明されている癒しの効果があり、この力を専門的に活用することで、言葉だけでは届かない心の奥深くにアプローチできます。
患者さんの表情が明るくなったり、コミュニケーションが活性化したりする変化を目の当たりにできるのは、この仕事ならではの喜びです。
例として、言語障害を持つ方が歌を通じて言葉を取り戻していく過程や、うつ状態の患者さんが音楽活動を通じて感情表現できるようになる瞬間に立ち会えます。
このように目に見える形で人の回復過程に関われることは、音楽療法士としての大きなやりがいとなるでしょう。
音楽の専門知識を活かせる
音楽の専門知識や技術を、趣味や芸術活動だけでなく、人を助ける仕事として活かせることが大きなメリットです。
音大や音楽学校で学んだピアノや声楽、作曲などの専門性が、そのまま職業スキルとして発揮できます。
さらに音楽療法の知識と組み合わせることで、単なる演奏や指導ではなく、治療的・教育的な意義を持つ音楽活動を提供できるようになります。
たとえば、クラシックピアノを学んできた人なら、その演奏技術を活かして高齢者向けの回想法セッションを行ったり、音楽理論の知識を生かして即興演奏による感情表現のワークショップを開催したりすることができます。
音楽を愛する人にとって、自分の音楽的素養を人の役に立つ形で活かせるのは、大きな満足感につながります。
幅広い対象にアプローチできる
音楽療法士は赤ちゃんから高齢者まで、様々な年齢層や状態の人々を対象に活動できることが魅力です。
精神疾患、発達障害、認知症、身体障害など、幅広い課題に対して音楽を通じたアプローチが可能です。
このため自分の関心や適性に合わせて、特定の対象に特化したり、幅広く関わったりする選択肢があります。
具体的には、小児病棟では子どもたちと一緒に歌やリズム遊びを楽しみながら痛みの緩和を図ったり、精神科デイケアでは成人患者とバンド活動を通して社会性を高めたり、高齢者施設では懐メロを歌って認知機能の維持を促したりと、対象に合わせて多彩な活動ができます。
幅広い対象との関わりを通じて、音楽療法士自身も人間理解を深め、成長していくことができます。
多分野で活躍できる
音楽療法士は医療、福祉、教育、地域支援など様々な分野で活躍できることがメリットです。
病院、リハビリ施設、特別支援学校、高齢者施設、児童施設など、働く場所の選択肢が豊富にあります。
この多様性によって、自分のライフスタイルや価値観に合った働き方を見つけやすくなっています。
たとえば、医療現場で専門職として緩和ケアチームに参加したり、教育現場で特別支援教育の一環として関わったり、福祉施設でQOLの向上に貢献したり、フリーランスとして複数の施設を掛け持ちしたりと、様々な形態が考えられます。
このように多分野での活躍の機会があることで、長いキャリアの中でも柔軟に働き方を変えていくことができます。
自己表現と他者支援を両立できる
音楽療法士の仕事は、自分自身の音楽的表現と他者への支援を同時に実現できる点が素晴らしいメリットです。
多くの支援職では自己表現の機会が限られますが、音楽療法では自分の音楽性を発揮しながら人を助けられます。
また、クライアントとの音楽的なやりとりは毎回異なるため、創造性を発揮する場面が多く、仕事への飽きが生じにくいのも特徴です。
具体的には、即興演奏でクライアントの表現に応えたり、その場の状況に合わせて曲を編曲したり、新しい音楽活動を考案したりと、常に創造的なチャレンジがあります。
音楽を通じた自己表現と他者への貢献が融合することで、音楽家としても支援者としても充実感を得られるでしょう。
音楽療法士になるデメリット

音楽療法士は魅力的な職業である一方で、現実的な課題も存在します。
キャリア選択の際には、これらのデメリットも十分に理解した上で判断することが大切です。
- 資格取得に時間と費用がかかる
- 求人が限られている
- 収入が安定しにくい
- 専門性が認知されにくい
- 感情労働の負担が大きい
資格取得に時間と費用がかかる
音楽療法士になるためには、かなりの時間と費用の投資が必要です。
日本音楽療法学会が認定する音楽療法士になるには、大学での音楽や心理学の学習に加え、学会指定の講習会受講や実習時間の蓄積が求められます。
これらの条件を満たすには、大学卒業後も数年間の学習と実践が必要で、資格試験の受験料や講習会参加費など、継続的な費用負担も発生します。
たとえば、音楽療法士になるための基礎コースだけでも数十万円かかることがあり、学会年会費や研修参加費も定期的に必要です。
認定校でない大学から目指す場合は、さらに多くの追加講座を受講しなければなりません。
このように、資格取得までの道のりは長く、経済的な準備も必要であることを理解しておくべきです。
求人が限られている
音楽療法士の求人は一般的な職種と比較して非常に限られているのが現実です。
日本では音楽療法士の社会的認知度がまだ十分でなく、専門職として公式に位置づけられている施設が少ないためです。
そのため、希望する地域や条件で働ける求人を見つけるのが難しく、就職活動に苦労するケースが少なくありません。
具体的には、音楽療法士として正規雇用される求人は全国でも年間数十件程度であり、多くの場合は非常勤やパートタイムの形態が中心です。
地方在住の場合、近隣で音楽療法士の求人が全く出ないこともあります。
求人の少なさは職業選択の大きな障壁となるため、就職前から情報収集や人脈形成を積極的に行う必要があります。
収入が安定しにくい
音楽療法士として働く場合、収入の安定性に課題があることを認識しておく必要があります。
正規職員として雇用される機会が少なく、多くは非常勤やフリーランスとして複数の施設を掛け持ちする働き方になりがちです。
また、セッション単位での報酬体系が多いため、クライアントの状況変化や施設の方針転換によって仕事量が急減することもあります。
たとえば、週に2〜3日、複数の高齢者施設や障害者施設を巡回する非常勤の音楽療法士の場合、月収は15〜20万円程度にとどまることが多く、施設側の予算削減などで契約が打ち切られるリスクもあります。
経済的な安定を求める場合は、音楽療法以外のスキルも身につけて複数の収入源を確保する戦略が必要です。
専門性が認知されにくい
音楽療法士の専門性が社会的に十分認知されていないことは大きな課題です。
「音楽で楽しく過ごす時間を提供する人」という誤解を受けやすく、治療的・教育的な専門性を理解されにくい現状があります。
国家資格ではなく民間資格であるため、他の医療・福祉職と比べて職業的地位が確立されておらず、チーム医療の中で発言力を持ちにくいことも少なくありません。
例として、「音楽の先生が来る日」と呼ばれたり、レクリエーションスタッフと同等に扱われたりすることがあります。
また、セッションの治療的意義や専門的アプローチについて、他職種に説明を求められる機会も多いです。
このような認知度の低さは、やりがいや職業的アイデンティティに影響を与えることがあるため、心の準備が必要です。
感情労働の負担が大きい
音楽療法士の仕事は精神的・感情的な負担が大きいという側面があります。
クライアントの苦しみや痛みに寄り添い、常に相手の感情や状態に敏感であることが求められるため、感情労働としての側面が強いのです。
また、音楽は感情を引き出す力があるため、時にクライアントの強い感情表出に立ち会うことになり、それを適切に受け止め対応する責任があります。
たとえば、終末期患者との音楽療法では深い悲しみや不安と向き合うことになりますし、トラウマを抱えた方が音楽をきっかけに感情的な反応を示すこともあります。
こうした状況で専門家として適切に対応しながら、自分自身の感情も管理しなければなりません。
このような感情労働の継続はバーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクがあるため、自己ケアの方法を身につけることが不可欠です。
音楽療法士が向いている人

音楽療法士という職業は、特定の素質や志向性を持つ人に特に適しています。
自分の特性と照らし合わせることで、この道が自分に合っているかどうかの判断材料になるでしょう。
- 対人支援の志向が強い人
- 共感力・傾聴力が高い人
- コツコツ実践できる人
- 音楽の表現力や即興性がある人
- 自己研鑽を怠らない人
対人支援の志向が強い人
音楽療法士に最も必要なのは、人を支援したいという強い意志です。
音楽の技術以上に、人の成長や回復を支えることに喜びを感じる人が向いています。
クライアントの小さな変化や進歩に気づき、それを価値あるものとして認められる視点が重要です。
例として、認知症の方が昔の歌を歌って表情が明るくなった瞬間や、自閉症の子どもが初めて楽器を通してコミュニケーションを取れた時に、深い喜びを感じられる人が適しています。
音楽を通して人の可能性を引き出すことに情熱を持ち、クライアント中心の考え方ができる人が音楽療法士として成功するでしょう。
共感力・傾聴力が高い人
音楽療法士には、他者の感情や状態を敏感に察知できる共感力と、言葉以上のメッセージを受け取る傾聴力が欠かせません。
クライアントの言語的・非言語的サインを読み取り、その瞬間のニーズに合わせて柔軟に対応することが求められます。
相手の視点に立って考えられ、先入観なく受容的な態度で接することができる人が向いています。
具体的には、言葉で表現できない子どもの気持ちを表情や動きから読み取ったり、高齢者の微妙な感情の変化に気づいて音楽の強度や速さを調整したりといった繊細な対応ができることが大切です。
このような共感力と傾聴力を持つ人は、音楽療法の場で信頼関係を築きやすく、効果的な支援ができます。
コツコツ実践できる人
音楽療法は劇的な効果がすぐに現れるものではなく、地道な積み重ねが必要な専門性です。
短期間で目に見える成果を期待するのではなく、小さな変化を大切にしながら粘り強く継続できる人が向いています。
また、記録や評価をしっかり行い、エビデンスに基づいて実践を改善していく姿勢も重要です。
たとえば、言語障害のあるクライアントとの週1回のセッションを何ヶ月も続け、わずかな発声の変化も記録しながらプログラムを調整していくことが求められます。
即効性のある派手な成果よりも、長期的な関わりの中で生まれる変化に価値を見出せる人が適しています。
このようなコツコツとした実践を厭わない忍耐力のある人が、音楽療法士として成功する可能性が高いです。
音楽の表現力や即興性がある人
音楽療法士には一定レベルの音楽能力と、それを柔軟に活用できる即興性が必要です。
完璧な演奏技術よりも、その場の状況に合わせて自由に音楽を変化させられる応用力が重要です。
声や楽器を通して感情を表現し、クライアントの音楽的反応に瞬時に応えられる能力が求められます。
たとえば、クライアントの即興的な太鼓のリズムに合わせてピアノで伴奏を付けたり、その日の参加者の気分に合わせて曲調や速さを変えたりといった柔軟な音楽的対応ができると良いでしょう。
このような音楽的な表現力と即興性を持ち、音楽を道具として自在に使いこなせる人が音楽療法士に向いています。
自己研鑽を怠らない人
音楽療法は常に発展している分野であり、継続的な学びと自己成長を志向する人に向いています。
音楽スキルの向上だけでなく、心理学、医学、教育学など関連分野の知識も積極的に吸収する姿勢が大切です。
また、自分自身の価値観や偏見に気づき、常に自己洞察を深める努力ができる人が良い療法士になれます。
具体的には、学会や研修会に定期的に参加したり、スーパービジョンを受けて自分の実践を振り返ったり、新しい技法や研究に関する文献を読み続けたりする意欲が必要です。
このように生涯学習者としての姿勢を持ち、自分を磨き続けることができる人が、長く音楽療法士として活躍できるでしょう。
音楽療法士として働く際の注意点

音楽療法士を目指す方が現実的な視点を持ち、適切な準備ができるよう、職業上の重要な注意点をご紹介します。
これらを理解しておくことで、将来のキャリアプランをより具体的に描けるようになるでしょう。
- 「音楽が好き」だけでは難しい
- 資格と仕事のマッチングが難しい
- 収入やキャリアの不安定さ
- 実習や臨床経験が重要
- 精神的・感情的なケアも必要
「音楽が好き」だけでは難しい
音楽療法士は単に音楽が好きというだけでは務まらない専門職です。
音楽の技術や知識はもちろん必要ですが、それ以上に対人支援のスキルや医療・福祉の専門知識が求められます。
クライアントの状態や目的に合わせて音楽を「治療的に活用する」という視点が不可欠です。
たとえば、音楽好きな方でも、自分の演奏を聴かせることと、クライアントの心身の機能を改善するための音楽活動を提供することは全く異なります。
優れた演奏家が必ずしも良い音楽療法士になるとは限らず、むしろクライアントに合わせて自分の音楽性を調整できる柔軟さが重要です。
このように、音楽への愛情だけでなく、支援者としての適性や専門知識を身につける覚悟が必要です。
資格と仕事のマッチングが難しい
音楽療法士の資格を取得しても、その資格を活かせる職場を見つけることは容易ではありません。
日本では音楽療法士が制度上明確に位置づけられていないため、専門職として認められる場が限られています。
多くの場合、音楽療法士としてではなく、介護職や保育士などの別職種として採用されることが多いのが現状です。
たとえば、資格を取得して介護施設に応募しても「音楽療法担当」としてではなく「介護職員」として雇用され、業務の一部として音楽活動を行うことになるケースがよくあります。
また、学校や病院でも、専任の音楽療法士ではなく、既存の職種の中で音楽療法的アプローチを取り入れることが多いです。
このような現状を理解し、資格取得後のキャリアパスを柔軟に考える姿勢が大切です。
収入やキャリアの不安定さ
音楽療法士としてのキャリアは、収入の面でも昇進の面でも安定性に欠ける面があることを認識しておくべきです。
常勤職が少なく、多くは非常勤やフリーランスとして働くため、収入が不安定になりがちです。
また、音楽療法士としてのキャリアラダー(昇進の道筋)が明確に確立されていないことも課題です。
具体的には、月に数回のセッションを複数の施設で行う形態が多く、1回あたり5,000円から15,000円程度の報酬で、月収にすると安定しないことがあります。
年間を通じて仕事量にムラがあり、夏休みや年度替わりには収入が減少することも少なくありません。
こうした経済的不安定さに対処するためには、副業や複数の専門性を持つなど、収入源を多様化する戦略が必要です。
実習や臨床経験が重要
音楽療法士として成長するには、理論学習だけでなく実際の臨床経験が不可欠です。
資格取得のための実習だけでなく、様々な対象者や現場での経験を重ねることで専門性が深まります。
特に新人の間は、可能な限り経験豊富な先輩のセッションを見学したり、スーパービジョンを受けたりする機会を作ることが大切です。
たとえば、ボランティアでも構わないので福祉施設や病院での実践機会を積極的に求めたり、音楽療法の研究会や勉強会に参加して事例検討を行ったりすることが成長につながります。
理論と実践の往復を繰り返しながら、自分のスタイルを確立していくプロセスが必要です。
このように、学び続ける姿勢と実践の場を自ら開拓する積極性が、音楽療法士として働く上で重要です。
精神的・感情的なケアも必要
音楽療法士は対人支援職として、自分自身の精神的・感情的ケアにも注意を払う必要があります。
クライアントの苦しみや課題に寄り添う中で、共感疲労やバーンアウトのリスクがあるためです。
特に病気や障害、死や喪失などの課題と向き合うことが多く、時に自分自身も感情的影響を受けます。
たとえば、終末期の患者さんとの音楽療法の後に悲しみが残ったり、深い心の傷を持つクライアントの話を聴いた後に重い気持ちになったりすることがあります。
また、成果が見えにくい場合のフラストレーションも生じやすいです。
こうした感情労働の負担に対処するためには、同僚との分かち合いや専門的なスーパービジョン、自己ケアの習慣化など、意識的な取り組みが欠かせません。
音楽療法士に関するよくある疑問

音楽療法士を目指す方々からよく寄せられる疑問について、現実的な視点からお答えします。
これらの情報が、将来のキャリア選択の参考になることを願っています。
- 音楽療法士は給料が低い?
- 音楽療法士はピアノが弾けないと駄目?
- 音楽療法士は国家資格になる?
- 通信制でも音楽療法士になれる?
- 音楽療法士の主な就職先は?
音楽療法士は給料が低い?
音楽療法士の給与水準は、一般的に他の医療・福祉職と比べて低めであるのが現実です。
常勤職は少なく、多くの場合は非常勤やフリーランスとして働くため、安定した収入を得にくい状況にあります。
ただし、働き方や勤務先、経験年数、活動地域によって大きく異なるため、一概には言えません。
例えば、新卒の音楽療法士が福祉施設などで非常勤として働く場合、セッション1回あたり5,000円〜15,000円程度、月に数回のセッションで月収10万円前後というケースが少なくありません。
一方で、経験を積んで複数の施設と契約したり、教育機関での講師と兼務したりすることで、月収20〜30万円程度を確保している方もいます。
給与面での不安がある場合は、音楽療法以外のスキルも身につけておくことが現実的な対策です。
音楽療法士はピアノが弾けないと駄目?
音楽療法士にとってピアノの技術は有用ですが、必ずしもピアノが上手でなければならないわけではありません。
むしろ重要なのは、クライアントとの関わりの中で適切に音楽を活用できる応用力と柔軟性です。
歌唱力やギター、打楽器など、他の音楽スキルを主に活用している音楽療法士も多く活躍しています。
たとえば、高齢者施設ではギターの弾き語りでセッションを行う療法士や、打楽器を中心に即興演奏を展開する療法士もいます。
また、声の特性を活かして歌を中心としたセッションを得意とする人もいます。大切なのは、基本的な和音進行が理解でき、メロディーに合わせて簡単な伴奏ができる程度の音楽的素養です。
音楽療法では完璧な演奏よりも、クライアントのニーズに合わせた音楽的関わりができることが重要です。
音楽療法士は国家資格になる?
現時点で音楽療法士は国家資格ではなく、民間資格にとどまっています。
日本音楽療法学会認定音楽療法士が最も広く認知されている資格ですが、法的な裏付けはありません。
国家資格化については長年議論されていますが、近い将来の実現可能性は低いというのが現状です。
具体的には、音楽療法の効果に関するエビデンスの蓄積や社会的認知の向上、養成システムの標準化などの課題があり、これらが解決されなければ国家資格化は難しいとされています。
また、すでに医療・福祉分野に多くの国家資格が存在する中で、新たな資格を設ける必要性についても議論があります。
このような状況を踏まえ、現在は既存の国家資格と音楽療法の専門性を組み合わせるキャリア戦略も選択肢の一つです。
通信制でも音楽療法士になれる?
通信制だけで音楽療法士になることは難しいですが、一部の学習を通信で補うことは可能です。
日本音楽療法学会の認定資格取得には、実習や対面での研修が必須であり、完全な通信教育では要件を満たせません。
ただし、音楽療法の基礎知識や関連学問の学習については、通信講座や通信制大学の活用も選択肢になります。
例として、通信制大学で心理学や福祉学を学びながら、学会認定の講習会に参加するという組み合わせ方があります。
また、音楽療法を専門とする学校の科目等履修生として実習だけ参加するケースもあります。
地方在住者や社会人の方は、基礎知識は通信で学び、集中講座や週末の実習で実践力を身につけるという方法が現実的です。
完全な通信制では難しいものの、工夫次第で遠隔地からでも資格取得を目指すことは可能です。
音楽療法士の主な就職先は?
音楽療法士の主な就職先には、高齢者施設、障害者支援施設、病院、リハビリテーション施設などがあります。
ただし、「音楽療法士」という職名での募集は少なく、他の職種名で採用されることが一般的です。
また、多くの音楽療法士は複数の施設を掛け持ちするフリーランスや非常勤として活動しています。
具体的には、特別養護老人ホームやデイサービスでの非常勤セラピスト、障害児通所支援事業所での指導員、精神科デイケアでのスタッフなどの形で働くことが多いです。
教育分野では特別支援学校の支援員や音楽講師として、病院では作業療法士や心理士として採用された上で音楽療法を実践するケースもあります。
現状では「音楽療法士」という単一の職業というより、様々な形で音楽療法のスキルを活かす働き方が主流です。
まとめ
音楽療法士は「仕事がない」という不安を感じる方も多いですが、現実を理解した上で適切な準備をすれば、充実したキャリアを築くことは可能です。
求人の少なさや収入の不安定さ、専門性の認知度の低さなど、いくつかの課題はあります。
しかし、人の心と体の回復に貢献できる喜びや、音楽の専門知識を活かせる魅力、幅広い対象へのアプローチができる多様性は何物にも代えがたい価値があります。
大切なのは、「音楽が好き」だけでなく対人支援の志向性や共感力、コツコツ実践する忍耐力、そして自己研鑽を続ける姿勢です。
実習や臨床経験を積みながら、自分に合った働き方を模索していきましょう。
音楽療法士としての道は決して平坦ではありませんが、音楽の力で人々の人生に寄り添い、変化を支えられる素晴らしい仕事です。
現実的な視点を持ちつつも、自分らしい音楽療法の道を切り拓いてください。